ヤマミヤアップデート

嘘は書かないつもり

夏の日の本谷有希子 本当の旅

2019.8.16 @Vacant

 

Vacantの2階へと続く階段が柱で埋め尽くされ、会場中央にセットされた大きな舞台が目に入った。

 

仲良しの3人組が東南アジアに旅行に行くが、SNSに楽しそうな写真をアップすることが主な目的になっており、映える撮影スポットを探したり、SNSに投稿している瞬間は充実感を感じているが、写真を撮ってない場面ではぼんやりしていて疲れ切っている。

そんなSNSを通した、軽く、上っ面で楽しんでいる旅が、ある出来事をきっかけに、危険で、重く、生命の危機を感じるような「本当の旅」になっていく…

 

劇中全編通して、主な登場人物である旅行に行く3人組を、帽子やメガネなどの小物を引き継ぎながら代わる代わる複数人が演じることで「役」を「人間」としてではなく、あくまで「役」として、客観的目線から見ることができた。

(この感想を会社の人に話したら「役柄が肉体に依存していないということですね」とスパッとまとめてくれた。)

またスマホで撮った写真や動画は舞台のスクリーンに大きく映し出され、客は自然とスクリーンを通して役を見ることになっていた。その結果SNSに固執して旅をする様子を冷静な、ある種冷めた目線で見ることができ、SNSのためにわざとらしく盛り上がる3人の痛々しさが際立っていた。

 

ラストシーンでは、それまでの楽しげなシーンを"回想"という形で再度ダイジェスト的に演じながら、それと対比するように命の危機に晒されている登場人物のピンチを表現しており、恐怖を感じる演出だった。